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石積みを考える その1

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我が家の石積み:既に崩れている箇所や孕んでいる場所が散見される

有り難いことに縁あって古民家を譲り受けたわけですが、傾斜地である敷地の段差部分は昔ながらの石積みとコンクリートによる擁壁のミックスで構成されており、様々な問題を抱えています。

石積み自体はとても合理的な手法で、自分のスタンスにもあっている存在なのですが、補修するにあたり、『誰でもできる 石積み 入門』という書籍と関連する石積み学校のワークショップに参加しました。

石積み学校のワークショップで1日半12人程度で完成。
明るい色味の石は依頼主が作業前に準備していた新規の石。

今回はその書籍の内容を引用しながらワークショップから得た自らの備忘録を記していきます。
(石積みの手法や知識に関しての詳細は、上記の書籍や石積み学校のワークショップへの参加をおすすめいたします。)

目次

0.はじめに
1.必要な道具
2.タイミング(目安)、範囲
3.床掘りをする
4.石を置く・積む
5.感想とおまけ

0.はじめに

・「一グリ、二石、三に積み」:一番大切なのはグリ(ぐり石:裏に詰める小さな石)。二番目が石の状態、三番目が積み手の技術。技術は三番目。

我が家では、大量のモルタルの斫りガラ、不要の割れた瓦があるので、それらも砕いてぐり石として活かしたい。

・どこの石積みも基本は共通

石積み学校のワークショップに参加後、自宅の近所にお住まいのおじいさんとお話する機会があり、地域の石積みに関して積み方から石の採取まで様々なことを聞くことができました。書籍で言われている通り、ワークショップで習った規則通りの内容で、場所が違えど基本ルールが同じであることを確認できました。

1.必要な道具

・てみ
・しょうせん
・ミニ熊手
・片口玄能
・ツル
・じょれん
・備中鍬
・ゴム引き手袋
・鉄の棒 + 足場板
・ビニールシート
・かけや + 杭 + 水糸

石積みをかつてやっていた地域だからか、しょうせん以外は譲り受けることができました。
自分が探したところ、地域でもオークションサイトなどでも見つけられなかったため、モノタロウでそれらしきものを購入しました。

2.タイミング(目安)、範囲

積石が孕んできていることが一つの目安だそうですが、我が家の積石は孕みと崩壊がミックスされたかなり進行した状態。ただ、範囲も広く、ひとつずつの石のサイズも大きいため、短期間で終わらすには人数が必要と思われます。まずは小さな崩壊部分で練習を試みようとは思っています。(続編で報告できたらと考えています。)

3.床掘りをする

・積石を取り除くときに、斜面を掘り込まない。
・崩し6割、積み4割。
・積石、ぐり石、土の配置は、その後の作業効率を考慮して決定する。
・全体的に細長い石であれば、小口が小さくても積石にできる。逆に長さがないものは積みにくいので、無理に積石にせず、ぐり石に使う。
・古い石積みは丁寧に外す。

手前に見える補修箇所は、既存根石をそのまま利用

4.石を置く・積む

・隣り合う根石の高さを変える:通常は根石を置いたら後ろにずれないように、裏にぐり石を入れていきます。

・水分が多い土地の根石の置き方:
1.根石の後ろに土を入れて固める:根石の後ろに土を入れ、しっかりとかけやなどで転圧してからぐり石を入れます。根石の下に水がたまると根石が沈む可能性があるので、ぐり石を伝った水が、根石の上を抜けるようにします。
2.土台に松の木を入れる:胴木があることで上からの力が均等にかかります。たとえ根石が沈んでも均等に沈み、石積が崩れにくくなります。松は空気に触れなければ腐ることはありません。

・石を積む際の3つのルール
1.荷重を奥にかける
2.積石を置いたらすぐにぐり石を入れる
3.2つ以上の石に荷重がかかるように乗せる:できれば3点で接するように置くのが理想ですが、これにこだわるあまり、もっとも大切な「石が奥に傾くこと」がおろそかになることがよくあります。3点目は難しければあきらめてもかまいません。最低2点で接していれば、さらに次の石(Bの石)を積むことで、3点目の接点ができるからです。

・積むときの4つのポイント
1.大きい石から小さい石へ!
2.石は長い方を奥行きに!
3.まっすぐ素直に置く!
4.積石は斜めに!

・ぐり石の入れかた:積石で背後の土を抑えていることを意識しながら、石の傾きを忘れず、ぐり石で支えながら1段ずつ積む

・積みながらたまに数歩下がってみて、積んだところを眺めてみると、早めに間違いに気づくことができます。

・休憩中の道具の置き場所:休憩中は道具を土の壁から離して置くようにします。でないと、もし土壁が崩れてしまうと道具が埋もれてしまい、手で掘り出す羽目になります。これもまた先人の知恵です。

・夜雨が降りそうなときは・・・:土の壁は、雨を含むとさらに崩れやすくなります。作業途中で雨が降ったとき、または夜の間に雨が降りそうなときには、ビニールシートで作業場を覆っておきます。

・根石の前に土を盛る:根掘りした後の窪みが残っていることが多く、放っておくと水がたまりやすくなる。

高さが出てきたら鉄の棒を隙間に差し込み足場をつくる

誰でもできる 石積み 入門』の引用とワークショップの感想を中心に長らく記しましたが、書籍の中にはイラストも盛り込んでわかりやすく更に詳しく説明されています。石積み作業を検討されている方は、ぜひ手にとってご覧になってみてください。

5.感想とおまけ

高開の石積み:おばあさんが一人で住まわれていました。お蕎麦をごちそうになって人の温かみを感じる。

ワークショップの作業自体が予定よりも早くに終了し、現場近くの「高開の石積み」を見に行く機会を得ました。

現地での会話の中で、住人がどのようにしてこのような石積を維持していたのか、いくつかのヒントをいただきました。

例えば、次に積み直す場所を定めて、石を入手するたびにそこでの作業が始められる状態に石を配置しておく。石を運ぶ距離も最短距離。基本的には最小限での労力で、最大限の成果を出す仕組みがあったということだと思います。

かつては集落で助け合いながら作業することは全国的に当然のことであったとよく聞きますが、こういった石積の作業は、複数人で取り組むことで技術の継承と村落の結束力が醸成されていたと推察できます。

まだはっきりとイメージできてはいないですが、今回の石積学校のワークショップや地元の住人を含めた移住者同士のコミュニティなどが、積極的に地域の枠を超えて共同作業に取り組んでいく時代なのかなとおぼろげながら想像しています。

我が家でも少しづつ作業に取り組んで、また結果報告ができたらと思います。

最後に、数年前にインドの建築現場や集落で撮影した写真を掲載いたします。

雨季に備えた排水システムを積石で構築していました。(後日談で機能しなかったと聞きました、、、残念)

階級社会のインドでは、石積の作業を石積専門のファミリーが行っています。女性や子どもはぐり石を運び、積石を積んでいく作業は男手と役割分担をしながら積上げていたのが印象的。

インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州の寺院を訪れたときに、建物と擁壁と屋根の結節点を写真に収めました。

木材も石と同じように積層させています。

根石の下に松の木を空気を触れさせないように埋めておくと、部分的に沈んだりすることを防げるという話がありましたが、その原理を想起させます。

おそらくこれはヒマラヤスギで、木材が貴重な素材であることと、石が大量に採取できること、そして部分的な崩壊を防ぎながら木軸下地の屋根をかける意味からこのようなシステムが出来上がったのでしょう。

屋根仕上材もスレート。

なだらかにうねっているのは御愛嬌。
整っているわけではないけれど、設備配管は木部と石部の特徴を活かして設置している。

石積の擁壁は、コンクリートの擁壁では表現できない凄みを感じます。

ではまた。

ABOUT ME
Sofu.
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長年空き家だった古民家に移住し、簡素で豊かな生活を模索しています。DIYやその他日常作業の気づきやノウハウをアーカイブしていくブログです。適度に本質的かつ良質なものを、既にそこにあるものを用いて生み出すよう心がけていきます。
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